湘南乃風の歌詞解析をする Part2 -4th~6th-
ここ最近は一日中湘南乃風を聴くのも苦にならなくなってきた。さらには彼らの過去のインタビュー記事なども楽しみながら読めるようになってきた。
そんな中、Twitterで湘南乃風
と調べてみたら、
こういった意見を見つけてしまった。なんだろう。
なんかちょっとやるせない気持ちになる。湘南乃風の何がわかると言うんだ。
…あれっ?もしかして俺、湘南乃風のこと、好きになってる?
まずいぞ。とりあえず前回の続き!
湘南乃風〜JOKER〜
- Joker
- NO WAY〜悪漢無頼〜
- 黄金魂
- 睡蓮花
- Mr.Ragga!!
- ダイヤモンド
- 約束
- 親愛なる...
- 曖歌
- 湾岸 highway
- SHOW TIME
- Left & Right〜名も無き足跡〜
- 恋時雨
- 親友よ
- rainy
2009年リリースの4thアルバム。いきなりだが最高傑作。もし無人島に湘南乃風のアルバムを一枚だけ持って行って良いと言われたらこのアルバムを選ぶ(どうしても湘南乃風じゃないとダメですかとゴネながら)。彼らが生み出した最強の夏のアンセム睡蓮花
が入っている時点で名盤だが、他の曲もクオリティは高い。全体的にロック色が強くなっているように感じられる(ギターソロが多く現れ始める)上、様々なタイプの曲が収録されているので、一般リスナーだけでなくHR/HMファンにも十分訴求できる内容となっていると思う。実際このアルバムも前作に続きオリコン1位を取ったらしい。この頃が湘南乃風の全盛期なのかな。
オープニングのJoker
からして勢いが違う。まず体感速度が速い。これまで湘南乃風はゆったりとしたテンポの曲が多かったが、このアルバムからちょっとロック色が強くなってきたように感じる。黄金魂
では久々にギターソロが登場。ちなみに黄金魂
は「黄金ソウル」と読むが、最初気づいたときあまりのダサさに卒倒しかけた。でもよく考えたらメタルでもImmortal Soulとかあるしな。案外メタルとネーミングセンスは近いかもしれない。
4曲目の睡蓮花
はヤバい。湘南乃風の魅力がこれでもかと詰まっている。これはマジで名曲。こんな曲作られたらもうグゥの音も出ねぇ。心配になるくらい静かなイントロをバックにHAN-KUNがエモーショナルに歌いはじめ、「あれ…?ここでこんな静かなバラード…?」と思いきやそれを完全にぶち壊す上がりまくる季節が来た ヤバくなれるのは誰・・・俺!俺!俺!俺!Ole!Ole!
ハイもうそこからは無限の陽パワーでぶち上げられます。サビのレゲエ 砂浜 Big Wave!!
なんてどうやったら思いつくんだ。俺は3回くらい生まれ変わったとしても思いつける自信がない。このサビ、ライブだとめちゃくちゃ盛り上がるんだろうな~。しかしこの曲はそれだけで終わらない!!!2回目のサビの直後、急に展開が180度変わる。MetallicaのMaster Of Puppetsの中間部分を思わせる急展開であるが、ここで若旦那が魅せる。
突然降り出した雨 ベッドで涙浮かべ 小せぇ声で 「なんで俺だけ・・・」 待ち受けにしている写メ 変顔で思わず吹き出して 泣き言なんか言えるか 「馬鹿やろうが!寂しくなんかねぇ!!」
この寂しくなんかねぇ!!が実際すごく寂しそうなのがポイント高い。ぜひ聴いてみてほしい。MVだとココから!
ここからまた4人が一緒に歌う(ここ80年代的なダサさがあって好き)パートを挟んでHAN-KUNのエモ歌パートに突入、盛り上げに盛り上げたところでまたサビに突入。そしてなんとそこからギターソロになだれ込む!なんだこの展開は!!!ソロが終わると同時に再び4人の合唱パート(ここも良い)、そこからほぼ忘れていたであろう冒頭のパートに戻り、またHAN-KUNのエモ歌パート、最後はしっとりと終わらせるのか???と思いきやまだ元気残ってたんですか?と言いたくなるような陽のエネルギーの超新星爆発で最後までぶち上げられます。最後の最後はさわやかなギターソロで締める。お腹一杯。ちなみにこの曲のMVの終盤では火吹きが見れる!ブラックメタルのMV以外で初めて見たよ!!!
もうこの時点で満足だがこのアルバムは以降も聴きどころが多い。ギターリフが完全にCrazy Train
な若旦那ソロ曲のダイヤモンド
、おしゃれ曲湾岸 highway
も良い。
前作から続くSHOCK-EYEサーガ第二章の親愛なる…
では以下のような歌詞がある。
そう あなたたちにしたら 俺らいつまでも子供のまま 我が子の旅立つ姿 涙に何を感じてるのだろう? (中略) 嬉しいとただ笑ってたお袋 喜び シャンパン開けた親父の顔 少し寂しそうに微笑むママのこと 「お願いします」と俺に初めて敬語で言った パパの覚悟を思い出したら 絶対離すもんか 繋いだこの手を離すもんか 二人のような未来を 俺らも築くんだ
前作のワンルーム
では同棲していた2人が、約3年の歳月の末に互いの両親の了承を得てついに結婚したようである。まぁ別人の可能性もあるけどね。
前作で赤裸々な恋愛ソングを歌うようになった彼らだったが、今作では失恋ソング恋時雨
まである。夏の終わりの失恋を歌った曲だが、前作純恋歌
から続けて聴くとこみあげてくるものがある。
出逢い 笑顔 別れ 涙 痛みはやがて強さに変わる 日暮色の君との愛を 夏の海を見ると必ず思い出すよ 紅の夕暮れ 純情に憧れ 群青の夜明け 自分を戒め 億千の星の中いつかきっと 一途になれる女(ひと)に出逢うだろう
億千の星の中
とあるけど、これはやっぱり純恋歌の目を閉じれば 億千の星 一番光るお前がいる
を意識しているのかな。でも逆順でも意味が通じる気も…これはきっとファンの中で論争の的になっていることだろう。
ということで、超ハイテンションの睡蓮花
や泣かせる失恋ソング恋時雨
を筆頭に、オラつき感を抑えつつもバラエティに富んだ佳曲が並ぶ良作である。これ一枚で夏を乗り切れること間違いなし!
ほとんどワードクラウドのことを忘れていたが、4thアルバムの歌詞をもとに作ったワードクラウドは以下。
3rdほど俺
とお前
は目立たない一方、愛
が大きくなっているのがわかる。前作では愛
は14回しか登場しないが、今作ではなんと75回も出てくる。前作までは独りよがりな感情をぶつけていただけだった俺
が、今作までの期間を経てお前
としっかり向き合うことができるようになったのかもしれない。このあたりから彼らが変化しているように思える。
最も目立つ(≒頻出する)のはragga
であるが、これはRaggamuffinの略でレゲエのサブジャンルらしい。HAN-KUNのソロ曲Mr.Ragga!!
でこの言葉が連呼されるためだと思われる(実際93回歌詞に現れる)。湘南
も地味に多く出ている。4枚目にして彼らも自身のアイデンティティを強く自覚するようになったのだろうか。
湘南乃風〜2023〜
- WICKED & WILD
- SALUTE
- 炎天夏
- STAY GOLD
- 雪月花
- いつか
- あなたのために
- 白詰草
- LIFE
- ハピバ
- 陽炎
- Born to be WILD
- Love It...。
- さくら〜卒業〜 feat. MINMI
2013年リリースの5thアルバム。前作のリリースから4年の歳月をかけており、さらにTo the next 10 yearsと銘打たれているだけあって、自信作であることがうかがえる。作風としては前作Joker
を踏襲している印象を受けた。音楽性には初期の要素がもうほとんど感じられないのが残念だが、前作が楽しめれば今作も楽しめるはず。
疾走感溢れる(湘南乃風最速曲?)SALUTE
はイントロからHR/HM感があるだけでなく、バックで鳴るギターのフレーズが良い…というかめっちゃカッコいいぞこれ。曲中に各メンバーのソロパートがあるのだが、「…上等だ!」のセリフとともに最後に出てくるRED RICEの真打ち登場感がヤバい。ここまで着いて来ることができたファンならここのカッコよさで震えると思う。冷静に聞くと興ざめするレベルでダサいけど。まぁそこは世界観を楽しみましょう。Manowarみたいなもんだから。
炎天夏
は前作睡蓮花
に次ぐ夏ソング。個人的な聴きどころは以下のパートにおける
ヤベェ気持ちいい 海だよ 深呼吸 スーハー 照れずに今日は言うぞ I Love You 「す、好きだー!!」
す、好きだー!!の言い方!マジでバカで良い(本気で褒めてる)。これも若旦那だと思う。でもなんかちょっとバカっぽさをオーバーに演出し始めるようになった気もするな~(さかのぼると純恋歌
あたりからか?)。曲としても睡蓮花
の二番煎じ感が否めない。曲構成もかなり似ている。とはいえ睡蓮花
はちょっと湿り気のある感じがするから、そういった要素がない炎天夏
のほうが好きっていう人もいるだろうな。つくづくよく作られてやがる。
ところでこの曲の最後のフレーズ、本当お前ら熱く生きてんの?、めちゃくちゃ刺さるね。
今作で描かれるSHOCK-EYEサーガ第3章であるいつか
では新たな展開が語られる。
My Love My Love いつかの為にこの言葉 ママ・パパからの… (中略) 毎日忙しくて寝顔にしか会えない夜もあるけど 散らかったオモチャ片しながら 元気な一日を描く やんちゃに走り回る無垢なお前が 勉強する姿思い浮かばないな 大事にしてほしいお前らしさ 賢くなんてならなくてもいい
ついに2人の子供が誕生したようである。まぁ別人の子の可能性もあるけどね。
雪月花
はなんと冬ソング。確かに冬になると彼らの需要は限りなくゼロに近いだろうし、マネジメントから冬ソングも作るように言われたのだろうか。悪い曲ではないし新鮮ではあるけど、あえて湘南乃風を冬に聴こうと思うリスナーってどれくらいいるんだろう。でも彼らの口から雪
という単語が出るのは衝撃。
後半に収録されている曲は若干初期の雰囲気が感じられる。Born to be WILD
の歌詞(以下)なんかは特に初期っぽい。
どんなもんだこんなもんじゃねぇ 本気なった豹が On the way 文句あっか? 文句ばっか言ってるヤツらの喉仏かっ切って
物騒でいいな~。ホントは徹頭徹尾こういう路線で行きたいんじゃないの?ちなみにこの曲のギターソロはホントにアツいです。
そんな5thアルバムのワードクラウドは以下のようになった。
wicked
やsalute
は(曲名にもあるように)、サビで連呼されることから頻出しているが、実際にはタイトルに用いられている曲でしか登場しない。全体を通して登場するのはやはり俺
とお前
で、前作では目立たなかったが再び存在感を増してきた。一方で愛
も前作に引き続き目立っている。注目してほしいのは君
である。徐々にそのサイズが大きくなっていることが分かるだろうか。前作において君
は13回歌詞に登場したが、今作ではおよそ2倍の24回登場する(ちなみにあなた
も前作では10回→今作では19回とその登場回数は約2倍)。もちろん相手が誰によるかでその意味合いは大きく変わってくるが、それを考慮しても俺
を取り巻く人間関係や、俺
の周囲への認識に変化が起きていることは間違いない。生きる
なんてのも何かを暗示しているように思える…。
湘南乃風〜COME AGAIN〜
Disk 1
- バブル
- DON'T BE AFRAID
- 晴ル矢
- ヒーローベルト
- ロード
- MASCHINE〜Type AB〜
- 瞹色
- 紅
Disk 2
- COME AGAIN
- パズル
- 我楽多
- Turn Over
- RED ZONE
- Z〜俺等的逆襲〜
- ちくしょー☆ばいみー
- Freeeeeeeee
- BIG UP (One Drop Remix)
2015年リリースの6thアルバム。なんと2枚組。思い切ったな~。2枚組だからかアルバムジャケットも2色になっている。力作ではあるんだと思うんだけど、個人的にはあまり印象に残っていない作品。前作と前々作が思いのほかよかったからか。悪くはないけどいつもの(Jポップ寄りの)湘南乃風といった感じ。
バブル
あたりはエレキギターによるヘヴィなリフやフレーズが聴ける。けっこう相性が良いと思うんだけど、ヘヴィなギターはあくまで味付け程度なのが残念。
Z〜俺等的逆襲〜
もイントロだけ聴くと壮大なメタルチューンっぽいんだよな…(最初聴いたときBathoryのShores in Flamesを思い出した)。
晴ル矢
が今作における夏ソングだと思われるが、残念ながら前々作の睡蓮花
や前作の炎天夏
ほどのエネルギーは感じられない。睡蓮花
が異常だったのか?あれはみんな躁状態だったのか?
紅
には以下のような一節があるが、
頼る相手もいねぇ 東京 二度と戻ることねぇ 故郷
ここを歌っている若旦那、世田谷出身なんだよな。説得力ゼロだぞ。
今作で聴けるSHOCK-EYEサーガの第4章はヒーローベルト
。
やっと買ってもらったヒーローベルト なんか 誇らしげな表情で ブカブカでもお構いなしで ガシャガシャ走り回ってる あたりキョロキョロ見渡してみては 悪い奴はどこ? 小さなヒーロー パパ見つければ戦闘モード 演じ切れるか 悪の大魔王 「ママをいじめるやつは誰だ」
前作で産まれた子供(まぁ別の子供かもしれないけどね)が順調に育ってヒーローごっこをしているようだ。ママをいじめる
が意味深だが詮索はしない方が良いだろう。次はどうなるか非常に気になるところだ。父殺しって古来から文学作品にはよくあるテーマだし
そんな6thアルバムだが、ワードクラウドは以下のようになった。
お前
と俺
に愛
、そして君
はもう見慣れたものになっているが、今作のワードクラウドで目立っているのは自分
だろう。他にも何
や夢
に心
、今
なども存在感を放っている。red
やzone
も目立つものの(曲名にあることから想像がつく通り)、Red Zone
の曲中のみで登場する語であるため、このアルバムを考察する際には無視しても良いだろう。
お前
や君
(この2人は同一人物の可能性もある)と向き合うことができるようになった俺
が、ついに自分自身の生と向き合うことができるようになったのだろうか。外へ向かっていた俺
の意識が自分自身の内部に向かっている過渡期なのかもしれない。そう考えると信じる
なんかも意味深いな…。
さて彼らのアルバムも現時点で残すところあと2枚+ミニアルバム1枚!彼らの歌詞世界はここからどのような変遷を辿るのだろうか。Part3に続く。